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二〇〇六年四月より日本列島を流浪しております。 その記録です。 写真はクリックで若干大きくなります。
 
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7月31日、8月1日のこと。



■2006年の8月を洋上で迎えた。7月の最終日に苫小牧フェリーターミナルにて乗船し、月をまたいで茨城県大洗に向かっている。いっえーい。海だー。風がちょう気持ちいいぜー。あ、いまトビウオがとんだよ。という風な陽気な語りができる状態では実はなかった。太平洋の穏やかざる波に、船は揺れに揺れた。タテ方向に揺れよった。タテはまずいよタテは。空気読もうよ。夜、船内のシアターで映画をみていた僕は、そのタテ揺れに自分の三半規管が対応できなくなってくると映画どころではなくなり、シアターを出て風にあたりにいった。デッキに人はいなかった。怒涛の猛風。水飛沫。そして夜の海の漆黒。夜の海を漠然と眺めたら1分と経たないうちに僕は恐怖に打ち震えた。立っていられなくなったので座り込んだらジーパンの尻が濡れてしどろもどろになった。でも立っているのは怖いのでそのまま座った。尻は濡れるにまかせておいた。そうしたらちょっと気持ちよくなってきた。
海で船が難破するなどして漂流してしまった人たちの恐怖について考えた。底知れないだろう。巨大な闇の中に独り。ゆらゆらと揺れている。足の下に広がる深遠な海。何がいるかしれない。ニモのファインディングもかなり大変だったときく。全方向に、心身ともに行き場をなくし、何も見えず、聞こえるのは近くの波が立てるちゃぷちゃぷという音だけ、その中でただゆらゆらと揺らされている。絶対にここから落ちてはならないと思った。そうしたらこの風がとても脅威に感じられた。この風の強さはなんだ。この意志をもったような風。私を吹き飛ばそうというのか。殺めようというのか。風のやつ。風のくせに。自然現象のくせに。ちょう怖くなって、あと尻も濡れまくっていることだし、僕は風呂にいった。

■風呂も揺れまくっていて、浴槽は流れる温水プールみたいなことになっていた。揺れながら湯に浸かっていると、となりに、荒川良々に似たおっさんが入ってきた。そのおっさんの胸毛に僕は見惚れた。水に濡れて絡まりあって、それはあまりに雄々しいのだ。あまりに猛々しいのだ。顔は荒川良々なのに。

■良々のおかげで僕の三半規管も自分を取り戻してきた。そこで僕は与えられた2メートル×1メートルのスペースに行き、横になって毛布をかぶった。一部屋に男、というかおっさんが10人詰め込まれている。もちろんどことなくくさい。イ・ビ・キ。ハ・ギ・シ・リ。あと屁。寝ながら放屁をしてはいけない。聞いた人は馬鹿にされた感じがして、言いようのない怒りを覚えるから。

■眠ったのか眠れていないのか、8時ころに起床し、パンやゆで卵を食ったり、良々を探したり、はしゃぐ子供たちに体当たりされたりして愉しく過ごした。朝になるとさほど船酔いはしなかった。乗り物酔いというのは精神に起因するものだとよくきく。ただのビタミン剤を酔い止めだと言って投与された患者はやはり酔わない、という実験を昔テレビでみた。朝になって僕の精神状態は上向いたみたいだ。もしくは自分に勝ったのかもしれなかった。克己。昨晩は酔いというモンスターに脅かされ、やはり自分はどうしても酔うのだ、ダメな三半規管をもっているのだから、こんなタテ揺れされたらどうしたってやられるんだ、という弱気が僕を支配していた。しかしそれは実は自分の内側にあるものとの闘いだった。おれは酔わない、酔うわけがない、酔ったためしがない、と思い込んでいれば、そう、精神が肉体を凌駕すれば酔いはやってこない。精神の役割というのは非常に重要だ。人をとりまく諸問題はだいたい精神的な転換でかたがつく。色恋の悩みも将来への不安も自分の精神の問題に還元すれば、克己すればけっこう解決する。でもそれはやっぱり一時的なことかもしれない。怖い映画をみたり独りで夜の海と向き合ったりしたら、また僕はひどく酔うだろう。そして弱気になるだろう。



■2時に大洗に着いた。期待していた夏の感じは無く、空はぬっぽりとくもっていた。船でずっと揺られてたから地面に降り立ってもしばらく揺れてる感じがする。と人々はよく言ったりするけれども、そんなことあるかー、斯様な妄言にだまされるかー。と思いながら着地、そのまま歩き出した。あ、揺れてる。まだ揺れてるよ。ぐわんぐわんとしているよ。糞。負けるか。ぐわんぐわん。糞。

■とりあえずビーチまで行ってみる。大洗サンビーチは広大だった。砂漠みたいだった。公園を抜けると砂の向こうに海の家が数軒。砂上の楼閣。そのさらに向こうに海。くもっているからか砂漠だからか、活気がない感じがした。それから今度は駅に行ってみる。こぢんまりとした駅舎。観光案内所が死角にあってなかなかみつけられなかった。町の地図をもらう。銭湯はありますか、と訊ねると、この街にはここしかない、と言われ紹介された町営の温泉施設に向かう。5時以降は500円になるというのでねばって待って満を持して5時、入浴いたした。


これがうわさの大洗サンビーチ

■入浴したあと休憩スペースに8時半まで居座る。まもなく閉館です、というアナウンスがあり、おもむろに立ち上がってさっ、と立ち去ろうとしたがバックパックがでかすぎてスマートにいかなかった。コンビニで弁当とビールを買って目星をつけておいた寝床へ向かう。ビーチと公園の境にあるベンチに人は誰もいなかった。よかった。マットを敷いて寝袋にくるまる。モスキートが顔面を襲撃する。


寝床
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